州庵カリー(チキン)の仕込み方
真田地鶏を使った本格チキンカリー

 インドカリーの基本であるチキンカリーの作り方を紹介しよう。
 鶏肉は真田町の養鶏家・坂口光氏が育てる鶏で、私が勝手に「真田地鶏」と呼んでいる。出荷していないのだが、これが実に旨い鶏肉なのである。塩で網焼きして試食したが、上質で香り豊かな油が滴り落ち、歯ごたえが何ともいえず、濃厚な鶏肉の旨みが口の中に広がる。煮込んでも最高で、いい出汁を出し、煮崩れしても肉の存在感がある。私の料理で鶏肉を使うときの指定素材となっている。
 さて、私のカリーの仕込は準備が3日前から始まり、初日に地鶏をさばき、2日目はタマネギの微塵切りを炒めてカリーベースをつくり、ようやくカリーの煮込みとなる。3日目は最終仕上げで、トロミを増す素材を入れ、味の調整となる。なぜかというと、鶏肉はさばいてから1日半ねかせると旨くなるからなのだ。
 ところで、私が仕込む量は凄い分量なのだ。直径24cm深さ24cmと同径の深さ17cmの寸胴2本を使い、重量にして15s、70〜80食ぐらいだろうか。尚、レシピはこの量を基本に書いているのでご了承いただきたい。

 では鶏のさばき方から順を追って紹介しよう。

●チキンカリー
 凝りに凝ったチキンカリー。自家製カリーパウダーとガラムマサラを使い、仕上げにはカシューナッツとココナッツミルク(パウダー)を使う。口に運べば、まろやかでありながらも、様々なスパイスの刺激が口の中に広がる。



作り方
  
●鶏をさばく●
 スーパーで買うブロイラーの太ももでも十分旨いのだが、私の場合、更に旨い地鶏が手に入る。1羽丸々手に入るのなら、当然、さばき方もマスターしなければならない。数年前、わがアトリエで坂口光氏を講師にした「鶏のさばき方ワークショップ」を開催した。その時のカリキュラムは、「しめる」ことから、「羽」と「皮」の剥き方などフルコースだった。
 今回は坂口光氏にご登場いただき、既に皮まで剥かれた状態の鶏をさばいてもらう。









◆ざばき方◆ 肉屋で「1羽」と注文するとこの状態(内臓無し)
1●背骨と腰骨の間に包丁を入れ、大腿部の付け根を剥がす
2●鶏を仰向けにして、足の付けねを外側へ開き、骨盤と太ももの骨の関節を脱臼させる。
3●大腿部が上になるように置き、大腿部の前方に包丁を入れ、骨盤から肉を剥がすように削ぎ切りする。

4●脱臼した骨の部分まで剥がせたら、関節周辺の筋を包丁で切る。

5●ここまでくれば大腿部をもぎ取ることができる。

6●手羽の付け根の関節に包丁を首の方向から入れ、骨をはずす。そして骨盤の方に胸肉と共に引き剥がす。
7●きれいに剥がせた胸肉と手羽(羽ばたくために手羽と胸肉は直結している)。
8●横たわっている一本の肉がささみだ(ささみも羽ばたきのためにある筋肉)。

9●骨に密着しているので包丁で削ぎながら剥がす。ささみが千切れないように注意する


◆ざばき完了◆ キリン(首)を切り落としたら「鶏のさばき」が完了する。
慣れれば20分でできる。
尚、今回の仕込みには3羽使う。




  
●カリーベース作り●
 さて、カリー作りをはじめるが、私が仕込む量は半端でないのだ。直径24cm深さ24cmと同径の深さ17cmの寸胴2本を使い、重量にして15s、70〜80食ぐらいだろうか。不思議なもので出来上がるころに何故か友人たちの訪問が多い。強烈な香りが漂うのか…、腹の虫が鳴くのか…数日できれいに無くなるのだ。
 ところで、カリーを美味しく仕上げるポイントは、タマネギを炒めて作る「オニオンペースト」が重要になる。インスタントのルーを使った普通のカレーを作る場合でも重要なポイントとなる。
 インド料理のカリーでは「カリーベース」がオニオンペーストに該当する。クミンをスタータースパイスにして、大量の油でタマネギの微塵切りを根気よくいため、トマトの水煮とあわせ、更に炒めたものだ。
 日持ちするので作り置きしておけば、カレー、ブラウンソースなど様々なルー作りに利用でき便利だ。尚、このレシピの分量は70〜80食を作ることを前提としているので、ご注意いただきたい。

◆材 料◆
 タマネギが勝負となる。吟味していいものを使いたい。新タマは水分が多く使いにくい。

●タマネギ…………………大18個



●サラダ油……………3 1/2カップ
●クミン……………………大さじ5
●マスタード………………大さじ5


●トマト水煮…………………5缶


◆作り方◆

1●タマネギは微塵切りにする。






2●油にスタータースパイスを入れて火をつけ、クミンとマスタードに泡と色が付き始めたらタマネギを入れる。


3●全量の1/2になるまで、ひたすら炒める。この量だと3〜4時間ほど。


4●タマネギの全量が1/2になったらトマト(水煮)を加え、更に炒める。




◆ポイント◆
1/タマネギの微塵切りは1センチほどでもいい。要するに粗微塵でもOK。
2/スタータースパイスは火にかける前に投入すること。そして、香りを油にじっくり移すこと。
3/ひたすら炒めるとタマネギに油がまわり、茶色い色が付き始めトロッとしてくる。このあたりから焦げやすくなるので要注意。
4/トマト(水煮)を加え更に炒めるが、トマトの水分がほぼ無くなるくらいを目安にする。
◆ストック用カリーベース◆





出来上がったカリーベースは、煮込むことを前提としているため、タマネギの粒が少々残っている。
他のカリー料理に使いにくいこともあり、ジューサーミキサーにかけてペーストにし、ストック用のカリーベースとしている。
冷蔵庫で保管して1週間、冷凍では数ヶ月ストックできる。
インド料理の外、イタリアンなどにも使えるので挑戦してみては如何だろう。
前述しているが、トマト(水煮)の水分が沸騰し飛んだらOKの状態になる。チキンカリー仕込は続くのだが、私の場合、この段階でカリーベースの一部を別の鍋に分け、ストック用を作っている。




  
●煮込み●
 本来、適当な大きさに切った骨付き鶏肉を使い、食べるときに骨から肉がホロッと取れるのが理想的なチキンカリーなのだ。ところが私の場合、地鶏をサバキ、大きな部位で扱っているので、これがなかなか大変で、理想系とは程遠いのである。なぜかというと、この地鶏、骨が頑丈で切れないのである。結果、大きなままで料理するため、火を通すことなどを考え、煮込みカリーとなってしまった。出来上がったとき、骨から肉がはずれ、少々、煮崩れている。
 言い訳ではないが、かなり煮込んでもしっかりしている肉で、骨からもいいダシが出るので、このスタイルでもいいか…と思っている。これが営業のインドカリー屋であれば、煮込みの途中で肉を取り出すなどの配慮が必要となるだろう。
 さて、煮込みに入る。既にカリーベースが出来上がっているので、全プロセスの半分は終わっている。後は用意したスパイスなどと鶏肉を入れ、コトコト煮るだけだ。忠実な「火の執事(火の番)」となればいい。
 最大のポイントといえば「絶対アクを取らないこと」だろうか。なぜなら「アク」には、スパイスと肉や骨の旨みが集まり、渾然一体となったある種の調味料と化しているからだ。アクを取ると重要なスパイスとダシを取り出してしまうことになる。

◆材 料◆



真ん中から下へ、時計回りでスパイスを紹介
●下ろし生姜……………………50g
●精製塩 ………………………20g
●ヒマラヤ岩塩 …………………40g
●州庵特製カリーパウダー… 150g
●ターメリック ………………… 50g
●パプリカ …………………… 100g
●マンゴチャツネ………………500g
●レッドペッパー……………… 20g


◆作り方◆

1●カリーベースにスパイス、チャツネなどを入れる。


2●鶏肉を円を描くように入れる。


3●鍋の8分目まで水を加えて、火をつける。火は強火。



4●沸騰してしばらくすると、鍋一面にアクが出る。が、絶対、取ってはいけない。火を弱火に戻し8〜9時間煮込む。

◆ポイント◆

1/スパイスのターメリックとパプリカは、カリーの色づけを担う。この2つの分量をコントロールすると、黄色や赤に調整できる。
2/アクは絶対に取らないこと。スパイスのいい香りがついた赤い油も取ってはいけない。
3/鶏肉から水分が出るので水の量に注意する。3番と4番の写真を見ればお分かりと思う。
4/カリーベースが鍋の下のほうに溜まり焦げることがあるので、上下が入れ替わるようにかき回すこと。


  
●仕上げ●
 カリーの辛味の基本となるミックススパイス「ガラムマサラ」を入れ、ナッツ系でトロミと甘味を加える煮込み作業が仕上げの段階だ。火は弱火のまま、1〜2時間煮込む。

◆材 料◆


[左]
●オリジナル・ガラムマサラ……75g



[右]
●カシューナッツ………………300g
(ミキサーで粉末にする)
●ココナッツミルク・パウダー…300g
◆ポイント◆
1/ガラムマサラはから炒りしてから入れると香りと辛さが抜群になる。
2/カシューナッツのほかに、ポピーシード、ピーナッツなどを入れても美味しい。
3/缶詰のココナッツミルクの場合、大型を2本入れる。

  
●完 成●
 表面に赤い油が浮き、実に、旨そうである。日本のカレーになれている方は、この油の多さを見てビックリするが、油が多いほど本場のカリーに近づくような気がする。
 インド料理の構成は主に、肉、魚、野菜などの具そのものが持つ旨みや出汁と、香り高いスパイスの2つから成る。この2つを取り持ち上手に共存させるのが油なのである。スパイスの香りと具の旨みを吸い込んだ色の付いた油の出来上がり次第で、料理の成否が分かれてしまうのである。

旨そうに出来上がった。完成した翌日に開催した「インドカリー酒宴ワークショップ」で、メインのカリーとして友人たちが味わった。