ご覧のアンティークは1930年頃の「IMCO・Ifa」というオイルライターである。
 時としてヘビースモーカーの私は、そのときの時間の過ごし方で、タバコ、葉巻、パイプを楽しみ味わっている。タバコを楽しみ始めると、タバコの香りと炎の香りに相性があることがわかる。炎の香りとは、燃料の種類によるもので、マッチの硫黄の香り、オイルの香り、特に感じられないガスの炎。
 同じタバコでも、火をつける道具で香りが変わるから面白い。私の場合、いい葉巻を楽しむ時は、炎の香りがないガスライターを使う。葉巻の香りを邪魔しないからだ。安物の葉巻はマッチがいい。マッチの香りがアクセントになる。パイプとなると、頃合のいい火玉を作って香りを楽しむので、長い燃焼時間が必要となる。そこでパイプ専用のオイルライターか、頭の長いマッチとなる。
 日ごろ愛煙しているフランスのタバコは、香料が少なく、タバコの葉を少々長く発酵させた素朴な味わいだ。この安物の葉巻に似たタバコは二十年以上付き合っているが、マッチの硫黄臭さか、オイルライターのどことなく甘い炎の香りが、ベストマッチなのだ。
 このIMCO・Ifaは、上田のフリーマーケットで見つけた。オイルライターとしてあまりにも有名なZippoは、根強いファンをもっている。しかし、ライターの歴史をひもとくと面白い事実が判明する。
 Ifaというオイルライターを作り出したIMCOという企業は、1907年にオーストリアのウィーンで設立され、主に軍服の金属製のボタンを作っていた。第一次世界大戦の終わり頃、1918年、ライフル銃の銃弾の薬莢でオイルライターを開発する。Zippo誕生の14年前のこと。軍からの依頼かどうかは定かではないが、軍服のトレンチコートのベルト通しに結び付けて使われたため、トレンチライターとも呼ばれていた。世界初の軍用品オイルライターだったのだ。
 Zippoの歴史は1932年にその端を発する。当時、ライターの先進国はこのIMCOを生み出したオーストリアで、Zippoはこれらを米国に輸入販売する商社だったのだ。翌年から、Ifaをはじめとするオーストリアのライターを改良して、独自のライターを製造販売するが、第二次世界大戦で米軍の支給品となるまでは、メジャーではなかったのである。戦勝国として、米軍が世界を駆け巡った結果、今日の世界的なブランドとなった。
 ご覧の通り、なんともアナクロさを感じさせるメカニカルなデザインだが、どこか懐かしいスタイルだ。時代の入った真鍮の味わいが、歴代のオーナーの思い入れを伝えてくれる。Zippoのようにワン・アクションで点火はできないが、両手でいたわりながら風防をスライドし、点火する。メンテナンスに手が掛かるが、だからこそ愛らしくなるライターなのだ。メカニカルな部分は壊れやすい…良くぞ生き残って私と出会ってくれたと思う。

#010●IMCO・Ifa オイルライターの原点