#034●1780年頃、トーマス・ミントンが生み出したブルー&ホワイトの
     銅版転写の図柄「ウィロー・パターン」

 写真のアンティークは、19世紀末、イギリスのブルー&ホワイトのテーブルウェア「ウィロー・パターン」である。
 私が子供の頃、父が上田の骨董屋で6枚ほど探してきたもので、その内の1枚が手元にある。有名な図柄なので、ご存知の方も多かろう。
 白地に藍で意匠を描いた陶磁器を我が国では「染付」と呼び、中国では「青花」という。イギリスでは「ブルー&ホワイト」と呼ばれ、ウィロー・パターンはブルー&ホワイトの究極の定番だ。
 プレートの真中に描かれている絵が中国風なので、一見すると東洋陶磁器のように思える。が、1780年頃、トーマス・ミントンが生み出した図柄なのだ。トーマス・ミントンといえば、世界を代表するテーブルウェア・ミントンの創設者である。
 ところで、ウィロー(Willow)は「柳」。ご覧のようにこのパターンには中国風屋敷と柳、柳の左に橋と東屋、橋には番をする兵士がいて、川には一艘の小舟、そして上空を舞う2羽の小鳥などのモティーフが描かれている。中国に古くから伝わる悲恋物語が題材となっているのだ。
 その昔、中国のある所に裕福な長官の家族が住んでいた。長官には美しい一人娘がいて、家来の若者と恋に落ちてしまう。長官は激怒し、屋敷の庭に流れる川の中州にある東屋(あずまや)に娘を閉じ込め、別の大金持ちの男と結婚させようと企て、家来に東屋を見張らせるが、若者は小舟に乗って娘を助け出した。ふたりは駆落ちして新生活を始めるが、ある日、長官に見つかり娘の目の前で若者が殺されてしまう。嘆き悲しんだ娘は川に身を投げ死んでしまった。哀れに思った神が2人を小鳥の姿に変え、2羽の小鳥は仲良く遠い彼方へ飛んで行った―という物語だ。
 悲恋物語が人々の心を捉えたのだろう。ヴィクトリア時代には当時流行していたシノワズリーと重なり、ヨーロッパで大人気の絵柄となった。多くの窯で様々なタイプが焼かれ、そして現在でも生産されている。
 さてさて、西洋と東洋、別物のように見てしまう陶磁器のアンティーク。陶磁器の歴史を紐解くと、ヨーロッパの陶磁器は18世紀の頃、交易で渡った日本や中国の陶磁器から技術や意匠など、大きな影響を受けている。
 30年ほど昔の話だが、骨董屋を巡るとヨーロッパのテーブルウェアなど西洋アンティークを簡単に見つけることができた。ところが、ある時期から忽然と姿を消した。それはバブルの頃。時同じくして西洋アンティーク専門ショップが登場する。骨董業界に新ジャンルが確立し、流通などが変化した影響だった。