国内では光学機器のアンティーク市場はカメラしかない。欧米では歴史ある市場とオークションがあり、様々なアンティークが流通している。近代科学の発祥の地であり、顕微鏡、望遠鏡、カメラなどが発明された土地柄だからであろう。ドイツの有名なライツやツアイス社製のものは、世界的に人気があり、値が張る。しかし、当時のドイツにもマイナーメーカーがあった。そのアンティークはリーズナブルだ。次の渡航時、アンティークショップを覗いてみては如何だろう。書斎のインテリアにピッタリなものに出合うに違いない。
 さて、ご覧のアンティークは、1930年にドイツの光学機器メーカーで作られたマイクロスコープ「Emil Busch,A-G.Rathenow.」である。
 アトリエのインテリアとして訪れる人々を見守っている。
 接合部の金属加工の温かい雰囲気や、真鍮の胴鏡が放つ懐かしい輝きに心惹かれるのか、何人かの訪問客がしばしば手にする。いまだ現役で、ゲストの子供たちとともに、庭の花などを覗いて見ると、取り合いになる人気者なのだ。
 10数年前、叔父のヨーロッパ土産で私の手元に来た。先日、インターネットで検索したら、ドイツのオークションで数台あり、80EUR(約1万円)ほどの値が付いていた。
顕微鏡が生まれたのは16世紀の末、オランダのヤンセン(Zacharias Jansen)が2つのレンズを組み合わせることで、物が大きく見えることを発見したことから始まるという。
 17世紀後半、顕微鏡を使った最大の発見は、ロバート・フックが細胞を発見したことだ。複数のレンズを組み合わせた最新顕微鏡を使ったという。その後、オランダのレーヴェンフック(Leewenhoek)は、自作の単眼式の顕微鏡で、人の赤血球、精子、単細胞のバクテリア等を発見する。19世紀になってレンズの性能が上がるまでは、皮肉にも小さな一枚のレンズを使った単眼式のシンプルな顕微鏡の方が、クリアで倍率も高かったという。
 そして、集光器の発明、複合レンズの誕生などによって、より明瞭な顕微鏡像が得られるよう進化する。顕微鏡を使うための技法もいろいろ考案され、より微小なものをより鮮明に観察する努力が続けられた。今日では、およそ1500倍の倍率が達成されている。
 ミクロの世界を見たいという人類の欲求は、顕微鏡の発明と更なる改良となり、科学的に重要な多くの発見につながったのだ。
 顕微鏡に兄弟がいたのをご存知だろう。同じ時代に生まれ、遠くを見るために進化していった望遠鏡だ。こちらの方は、我々の住む地球、宇宙の理解に貢献したのだった。

#033●シンプルなフォルムと真鍮の輝き。
     アンティーク・マイクロスコープEmil Busch,A-G.Rathenow.