商店会活性化 街並み再生など―現在進行中プロジェクト

T◆上田市松尾町商店会で始まった
  まちおこしジャーナリズムに立脚したフリーペーパー 
隔月紙 フリーペーパー真田坂 発刊事業


1/フリーペーパーの発刊で消費者との距離を縮める
 松尾町商店会の役員会に、ここ一年ほどアドバイザーとして同席している。数時間にわたる会議は真剣そのもの。賑わいの衰退を、決して量販店などのせいにせず、5年、10年、30年を見据えた商店会活性化を議論し、上田市の中央商店街の中でも、独自で先進的な方策を企画・展開しているのである。そんな中、「訪れるお客様と商店主の距離感が分からなくなり、結果、離れているのでは―」という意見がでてきた。
 そこで、この半年、広告代理店や出版社に頼らず、商店会活性化をコンセプトに、自らの手でフリーペーパーが発刊できるか―を研究してきた。松尾町商店会は専門店が多く、個性豊かな店主がたちたくさんいる。買い物客や読者が参加でき、オーナーの顔が見える紙面作りを目指して、専門店が持つ様々な知識や情報を発信し、量販店に馴れてしまった消費者に「暮らしの知恵」を伝えることができないだろうか―。
 フリーペーパーの「真田坂」というタイトルは、松尾町商店会の坂道、上田駅前ロータリーから北進するメインストリート300mほどの坂のニックネームである。長野五輪開催直後の1999年、上田市の中央商店街のアーケードを撤去し、電線が一部地中化され、イメージが一新されたのを機に、松尾町商店会では21世紀の商店会の再生を賭け、また、商店会のブランド化を目指して愛称を市民に公募、2000年4月、「真田坂」と決定した。ところが、五輪景気の後、もともと賑わいが少なかったとはいえ、買い物客数は下降の一途だ。
 商店街は、その時代時代に、賑わいを見せた、いわば訪れる人々が主人公となる夢の舞台。ところが、モータリゼーションの進展による郊外の開発、生活スタイルの変化、大型量販店の出現で、にぎわいが郊外に分散し、市街地の商店街は年々衰退。平成の大不況が追い討ちをかけ、全国的に危機的な状況なのである。
 フリーペーパー真田坂は商店会活性化策のツールなのだが、お客様と商店主たちをつなぎ、「未来という坂」を登っていく大切なメディアとなり、「読者」が「松尾町商店会のファン」になることを願っての発刊なのである。
 実物を松尾町で手にとってもらえば分かるが、広告やクーポンを極力排除した。最終面の広告欄は、イメージ広告からクーポン付き広告まで、様々な形態を掲載する予定である。今回、商店会の役員会でクーポンの話をしたが、商店会の判断として「読み物としての街おこしグラフには今のところ必要ない」との見解で一致した。






















2/フリーペーパー発刊概要
・フリーペーパー名 『Bimonthly 真田坂 ○月号』
・発行 松尾町商店会
・紙面構成 A4判8面(A3判二つ折り2枚)カラー印刷
・発行部数 6,000部
  商店会各店舗10部無料配布(それ以上必要な場合は1部50円で買取)。上田駅、長野駅、別所温泉駅、ホテル、銀行、飲食店、理・美容室などを中心に置く。
・松尾町商店会教養部内に編集委員会を設置
・企画編集 当事務所(ルポライター兼任)
・各号地元ライター、フリーライターが参加(上田在住、出身の著名人にボランティア記事依頼予定)
・紙面構成内容 イメージは次項に画像データあり
 [1面] ◆写真・タイトル ◆コンテンツ・インデックス ◆今月の巻頭言
 [2面] ◆特集ページ(毎月、様々な角度から松尾町を紹介する。また、まちおこしの光と影、行政政策検証、経済活動と物流、観光施策の提言、都市論と文化論など様々なフィールドを取り上げる)
 [3面] ◆銘店探訪(毎月2店程度を取材紹介)
 [4面] ◆料理コーナー(精肉店、食材店、飲食店に限らず、料理好きな商店会員による季節感溢れる料理レシピ)
      ◆売れ残りミュージアム(各店にある売れ残り品を発売年の流行語コラムと共に紹介)
      ◆空き店舗情報(潜在的起業家に向けた空き店舗情報)
 [5面] ◆商店主図鑑(毎月1人の店主を趣味なども交え紹介) ◆コラム・町おこしを考える
 [6面] ◆今月の特選品情報(毎月2店程度から商品を推薦) ◆真田坂街歩きエッセイ
 [7面] ◆ストリート・インタビュー(老若男女へ突撃取材)
      ◆暮らし百科(いいものの見分け方、ライフサイクルコストの話、真贋物語など専門店の知識を基にしたコラム)
 [8面] ◆広告欄 ◆編集後記


















3/フリーペーパーとは
 ここ数年、「フリーペーパー」など無料の生活情報紙がブームとなっているが、その始まりは1970年代、大都市圏、政令都市、県庁所在地でミニコミ紙のルーツとして発刊された。商店会が創刊したものでは、東京銀座の「銀座百店」などが有名だ。そのほとんどは広告代理店や地方紙の子会社、タブロイド判ローカル新聞が、チラシ広告の効率化の延長線でスタートしたもので、「街おこし」が必要ない商店会が、町外の業者へ発注しているスタイルである。
 フリーペーパー有力各社が平成10年4月に設立した日本生活情報紙協会(Japan Free Newspapers Association:略称JAFNA−ジャフナ)で、以下のように「フリーペーパー」を定義している。
 『特定の読者を狙い、無料で配布するか到達させる定期発行の地域生活情報紙で、イベント、タウン、ショップ、求人求職、住宅・不動産、グルメ・飲食店、ショッピング、演劇、エステ・美容、レジャー・旅行、各種教室など多岐にわたる生活情報を記事と広告で伝えるメディア』
 今回のフリーペーパーの全国的に珍しい点は、小規模商圏8万人(旧上田地区の商圏です)内で、「まちおこし」を主眼とした『グラフ紙(今では死語)』の形態で、単に直接発刊でなく、商店会内に編集委員会を置き、自らが予算を編成し、編集に携わっていることだ。
 商店主の方々は「折込チラシ」のイメージはあるが、「フリーペーパー」を自ら発刊するメリットが分かりにくい。そこで、折込チラシとフリーペーパーの違いを挙げてみる。
 情報伝達手段のなかで一方向のものが「折込チラシ」で、商品情報、セール情報などをダイレクトに、必要最小限の情報で、確実に告知・伝達するもの。新聞に折り込まれるため、一方的に、また、自動的に消費者へ渡る印刷物で、目に留まるデザインとするため「イメージ」や「価格」を強調する構成がとられる。
 ・商品情報、セール情報等を必要最小限の情報で告知・伝達するメディア
 ・レアな情報を伝えるのが折込チラシ
 ・日刊新聞へ折込むため『その日限りの伝達手段』という特性を持ち、確実に消費者へ伝達するためには『膨大な部数』が必要
 ・紙面に限りがあり、スペースは「ためになる記事」に割けない
 一方、フリーペーパーは「定期刊行物」で、基本コンセプトと編集の工夫によるコンテンツを構成することで、「読者」を確保でき、読者は「松尾町商店会のファン」に直結する可能性が高い。
 さらに、商店会を訪れるお客様の発言も取り上げ、情報受発信型双方向のメディアとなる。消費者と商店主のコミュニケーションから、「街おこし」を点検し、商売、イベント、街並み、行政施策、補助金などの様々な「活性化策」を検証でき、「街おこし・ジャーナリズム」のメディアとして発行することが可能である。
 ・定期発行の地域生活情報紙誌で、生活情報を記事と広告で伝えるメディア
 ・消費者が能動的に手に取るメディアであり、「読者」を確保でき、顧客、商店会の双方向のレアな情報を伝えることができる
 ・定期間で消費者の手元に残るメディアのため、発行部数を制約できる
 ・数紙面の構成なので、商店や商品情報のみでなく、歴史や商店主のキャラクターなどにまで突っ込んだ「商業=文化」の基本的な情報を掲載できる
 ・商店会活性化、街並み再生、大型店舗の光と影などの商店会が担う社会的テーマを、話題性を重視したジャーナリスティックな視点から情報発信できる






























4/商店主が勉強する活性化の「セミナー」や「専門書」から距離を置く
 商店街活性化には、いろいろな要素が複雑に絡み合っているのはいうまでもない。商業は商店主が行う営利事業だが、時代の文化性、消費者の文化性、また、地域の文化性に左右され、各個店は商店主が育む「商品・サービスという文化」であることを忘れてはならない。
 ところが、商店街活性化の手法や専門用語を見ると殆どが「カタカナ」であり、そのすべては、アメリカにおいて社会科学分野の中から生まれてきた言葉だ。また、経営、マーケティング、商業などの用語のなかには明らかに間違っているもの、時代遅れのものがあり、前提条件を確認しなければならないものもある。
 特に「社会科学」と称される領域には、人々の行動を自然科学の方法を使って、「人はイメージに基づいて行動する」と仮定し、人々の行動の総体という一面を持つ社会現象を、人々の意識とは無関係に、意識や恣意性を除外して説明し、予測する方法を追求してきた。
 また、1980年代に登場した「知」のポストモダンは、一例ではあるが「感性工学」なる学問を生み出した。その設立趣旨には、「社会科学、人文科学、自然科学、工学並びに技能等人間のなせる業を融合し、人類の幸福のための方法を求めていきたい」とあり、自然科学でも「大統一論」がないのに、一体、可能なことなのだろうかと頭を抱え込んでしまう。
 たしかに、「これから起こることを起こる前に知りたい」というのは人間にとっての基本的な欲望のはずだから、明日世の中はどうなるのか、有象無象の動向に左右されることなく前もって知りたい、という思考は分かるが、それは「人情」レベルのものではないか。
 正確に予測するためには、個々人の思惑などには関係なく貫徹する「社会法則」を発見すればよろしい。「人はイメージに基づいて行動」しているつもりでも、実はその背後では「法則」が支配しているのだ――というのはレトリックそのものではないだろうか。関係する個々人がなにをどう考え・どう行動しようとも、その総体は(マクロで見れば)こういう法則のもとにあるのだ――ということになる。
 よく、経営、マーケティングに登場する「ハフモデル」、主流派経済学の「均衡価格」、「商圏人口」、通行量などの「数値分析」などはその見事な一例といえないだろうか。これらの理論が完成されたプロセスには、当時日進月歩だった物理学を応用して完成させたという。以来、理論の欠陥については様々なレベルで指摘されているが、対策は備忘策ばかり、基本的な欠陥はずっと引き継がれている。
 小売業は客の生活に必要な材料を提供することを事業機会としている。有店舗小売業の場合、客は「地元・周辺住民」であることが多いことから、客数は人口に比例するとか、人口の多いところが好立地などという――ある種、迷信レベルのものが蔓延している。店の客数・売り上げと周辺人口には因果関係は無い、にもかかわらず、多くの経営者が「人口神話」に陥っている側面も見逃せない。
 中心市街地の商業活性化論において挙がるものとして、『中心市街地に居住する人口を増やす施策を講ずる必要がある』、『中心市街地に(買い物以外の目的で)来訪する人口を増やす必要がある』、『そうすれば、商店街は活性化する』などというフローは、論理的には最初から破綻しており、全国に一カ所も成功事例はない。
 ところが、「人口依存型活性化策」を振り回す傾向は、この期に及んで、依然として減少していない。
 冒頭に述べているが、商店街活性化の基本には、各個店が如何に魅力ある繁盛店に近づくかなのである。老舗の専門店であれば、商品、サービスのノウハウを編纂し、今日にも通用するよう通訳しながら時代の文化性、消費者の文化性などを見越した「暮らしのコンサルタント」となれば、量販店で馴らされてしまった消費者に「暮らしの智恵」を提供できる。また、徹底的にニッチ市場を専門とした路線をとって、情報化時代を上手く生かして生活する自立度の高いお客をリピーターに育てていくなどの様々な方法があるのではないか。
 そして、各個店が文化性豊かな魅力ある専門店であることを、様々な物語として消費者にリレーションし、それぞれを集積化することで、郊外の量販店とは違った商店街に生まれ変わることができる。店主たちが時代の文化性、消費者の文化性、また、地域の文化性を再認識し、この時代にあったアレンジを行って、「商品・サービス」を基にした「商い」という「文化」を磨いていくことがスタートラインなのである。

5/商店会活性化策ツール・フリーペーパー
 街おこしにせよ、活性化イベントにせよ、商店会自身、基本的なコンセプトが明確に見えていない。そのため、活性化イベントやセール、マップなどのツール発行も、バラバラとなり、結果的に「一過性」となってしまう。
 商店主は、日々、商いを向上させるため情報を集め分析し研究をしているが、その殆どは、問屋や同業種の寄り合いなど業界内のものである。また、様々な専門書やセミナーも前項で指摘したとおり、「商い」の文化面を無視した「テクニック的なもの」でしかない。店先で対応する顧客は、常連や専門店を必要とする自立度が高い消費者で、コミュニケーションから得られる情報もある意味で偏っている。
 昨今のIT時代、活性化策のひとつである双方向性の情報受発信として、商店会がホームページを持っている。しかしながら、インターネットの双方向性の特徴を生かしている運用が殆ど見られない。なぜなら、コンテンツの構成と内容は、「生の声を聞くフィールドワーク」という「取材」を必要としないものになり、殆ど情報が更新されず、折込チラシのような一方的な情報発信となっているからである。このような現状では、「商店会を知ってもらう」、「消費者を知る」という双方向のコミュニケーションは難しい。
 少しでもコミュニケーションを育むためにフリーペーパーが必要となる。印刷物の定期刊行メディアは「残るメディア」であり、人気雑誌などのように成長させることができる。
 老舗の専門店は、商品、サービス、街、暮らしなどの変遷を語る歴史物語の宝庫と考えることができる。好景気、不景気を乗り越えてきた商店主の歩みは、生き様であり、人間味溢れるストーリーなのである。今日の様々な商品、サービスは、今日まで頑張ってきた専門店があってこそのもので、すべてのものは「過去のモノ」をアレンジして誕生している。
 これらをテーマに、暮らしの歴史と文化を感じる読み物にもでき、また、近未来を語ることも可能であり、感動の物語を通して消費者に商店会の本当の姿を伝えることができる。
 顧客や読者が参加できる紙面を目指し、消費者の「生の正直な声」を捕らえる取材をすることで、『商店会活性化策』のヒントを拾うことができ、また、専門店からの様々な商品情報、周辺情報を発信することで、大型店に馴らされた消費者に「いろいろな暮らしの知恵」を与えることが可能であろう。
 また、フリーペーパーを持つことで、顧客や読者が参加する協働型の活性化イベントなど様々な活性化策の「調査」、「実験」が可能ともいえよう。
 全国的に見ると「商店会報」、TMOの広報活動「広報誌TMOたより」などの自治会広報的な簡易的な発行物は見られるが、全て組織内のインナー・メディアで、消費者とは無縁のものである。商店会が本格的なフリーペーパーを持つことは珍しく、話題性のある事業である。
 商店会「活性化策」ツールであるが、企画編集次第で「商店会の基本コンセプト」を見出し、老舗なりの商いという「文化」を再認識でき、消費者と共に「新たな文化」を育んでいくフリーペーパーとなるのである。


6/第2号特集は「街ってなに 〜商店主座談会〜」
 さて、今号の発刊日は8月10日であった。信州上田に帰省する皆さんを意識したスケジュールである。
 次号コンテンツの予告は、9月、中旬となるのでお楽しみに。
 松尾町のフリーペーパー事業。会員の方々とどのように育てていくか…、そして、長く続けたいものである。この事業の経緯は、このページで紹介していきたい。






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●役員会での検討 ●最終発刊会議にはマスコミ取材も ●上田駅前から北に延びる松尾町商店会
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●松尾町にある上田ケーブルビジョンメディアBOXで
  フリーペーパー真田坂 発刊記念 特別対談
   「上田の街を語る」
    ・松尾町が行ってきた活性化
    ・消費者として中央商店街を見る
    ・上田の街を歩く 
●真田太平記館元館長・土屋郁子氏(右)
              VS  プランナー安藤州平(左)
 記念対談は9月2日に上田ケーブルビジョン・UCVで1時間番組として放映された